特別版とは? ドラマCD「紅蓮の夢」概要登場人物紹介登場人物紹介スペシャル鼎談

■略歴

亀山俊樹(かめやま・としき)/音響監督 

 1955年生まれ。広告代理店等を経て、音響制作会社勤務後、「グルーヴ」を立ち上げる。アニメーション音響監督作品に、『さよなら絶望先生』『ひだまりスケッチ』『まおゆう魔王勇者』『団地ともお』『のんのんびより』など多数。

安藤岳(あんどう・たけし)/プロデューサー

東映ビデオ(株)所属。映画・アニメーションの音楽プロデュース及びコーディネートを手がける。主な音楽プロデュース作品に、アニメ『最終兵器彼女』、劇場映画『おろち』など。楽曲プロデュース作品に『HK変態仮面』などがある。

砂守岳央(すなもり・たけてる)/脚本・作曲担当

京都大学文学部卒。東京藝術大学音楽学部修士課程修了。東京芸大在籍中、「沙P」名義でニコニコ動画に作品を発表し、作曲活動を開始。2013年12月には『覚醒ラブサバイバー』(小説・電撃文庫/CDアルバム・フライングドッグ)で同時デビュー。

『茅田砂胡全仕事〈特別版〉』に封入されたCDは、収録作品「紅蓮の夢」の一部をドラマ化したものです。音響監督の亀山俊樹氏、脚本・作曲を手がけた砂守岳央(沙P)氏、制作プロデューサーの安藤岳氏のお三方に、制作過程をふりかえっていただきました。

 

じっくりじっくり作りました

安藤 発売日まであと少しになりました。今回「特別版」につくドラマCDの制作は、異例づくしでしたね。まず振り返ってみて、どうでしたか。

亀山 まず特殊だったのは、始まってから終わりまでが長い、ということ。シナリオをもらってからキャスティングして、収録まで通常は1ヵ月以内で終わるんです。CDの製造期間を入れても、2ヵ月。

砂守 そうですね。今回は構想から1年以上経ってます。最初に打合せをしたのは、去年のまだ寒くない時期でした。

安藤 すみません。

亀山 でもそこがよかったよ。収録からミックスまでも余裕を持って、じっくり構えられた。キャスティングも、じっくりじっくりやりましたもんね。長い期間練ることができた。

安藤 企画が始まったときには、原作(「紅蓮の夢」)の原稿がなかったでしょ。プロットもお書きにならないタイプの作家さんでしたし。

砂守 いったいキャラクターが何人出てくるのかな!? と思いました。(笑)

安藤 最初は「どんな話になるか」という想像から始まりましたからね。

亀山 完成した小説を読んで、ここから先の展開もドラマ化したいなあ、とワクワクしましたよ。

安藤 曲録りを先にして、それから声優さんの収録をしたのも、異例でした。そんななかで、お二人がご苦労されたことは?

亀山 シナリオいただいてからのことで言うと——(場面も展開も)跳躍のあるお話になったので、そこをどう自然に聞こえるようにするか、ということ。内容はがっちりしているので、演出はストレートでいくしかないなと。砂守さんからシナリオをもらった時点で、先が見通せたところもありました。

砂守 苦労……CDにすべては納まりきらないので、どこを、何をピックアップしていくといいか、ということをすごく考えましたね。

安藤 10数名ものキャストでやったというのも、最近のドラマCDではあまりないことでした。

亀山 そうですね。ドラマ収録部分では出番が少なくても、どのキャラクターも小説内でフィーチャーされる可能性があった。出番の多さ=キャラクターの重要性ではない、というのが、ポイントだったかもしれない。

砂守 通常は主人公が一番せりふが多くて、せりふの量の順にキャスティングを重視していく、とわかりやすいのですが、今回は「ちょこっとしか出てないけど、別シリーズの主人公です」ということもあった。聞かれるかたの中にもキャラクターのイメージがしっかりあるだろうし、深みを持って演じてもらわないといけない。それを考えると、結果的に人数が多くならざるを得ない、ということに。

 

せりふの工夫とテクニック

安藤 贅沢な作りでしたよね。脚本面でのご苦労は、どうでしたか。

砂守 「この構成でいきましょう」と決まったのは早くても、その後が長くて……結局5稿までいったんですが(笑)。もうちょっと詰められるんじゃないか、とか、ここは長すぎるかな、とかシーンを出したり入れたりの作業でした。読者のかたは「紅蓮の夢」を読んでから聞くので、通常よりもせりふが多いと、やりすぎで違和感があるかなと思いました。なので、長いせりふは2つにわけて、間に相づちなどを入れることもしています。

亀山 そう、せりふには、それを聞いた人のリアクションが当然あるものだから。ドラマCDと言っても、朗読ではなくてライブ感があるものを録りたいんですよ。だから、各人の表情の変化を拾っていきたくなる。台本にはないアドリブ、リアクションも入れたりして。

砂守 小説の場合は、時間軸をずらせるじゃないですか。だーって長いせりふに対する反応を後で出してきたりできるけど、音ではそれができない。そのままやってしまうと、とても不自然になってしまいますから。

亀山 せりふの方法としては、食っていく(言い終わる前に次のせりふを重ねていく)とかもできるし、遠近感も出せるんですよね。後ろでわいわいやっているのの手前で話している、とか。

砂守 どかどか蹴られているところで、ぼそっとしゃべっていたりもしますね。

亀山 だから出入り関係、人物の位置関係はすごく考えたね。どのせりふも、真正面から語りかけられるものじゃない。空気感、距離感が大事。空気をうんと含んだ声にするというか。ちゃんとイメージがあって原作もシナリオも書かれてるので、その距離感をどうストレートに再現するか。「再現」といっても、読者さんをいい意味で裏切らないといけないところもある。

砂守 声色や言い方でせりふもさまざまな解釈ができますし。シリアスなのか、おもしろいのか。原作を読んだ人の予想とちがっても「こういうのもいいな」というものがあれば。

亀山 役者のせりふの応酬……ライブ感って本当に大事。話の展開を知ってはいても、最後のせりふに至る、演じる者の心の変化が大切で、シーンの最後のせりふに向かって自然に気持ちが進んでいかなきゃいけない。うまい役者は、せりふありきでスタートしないんですよ。今回の人たちは、みなさんニュートラルさ、まっすぐさを持ってくれていたんじゃないかな。

砂守 本当に。「そうじゃない」と思う瞬間がなかったですよ。

 

世界観を共有できるかがカギだった

安藤 本来であればプロデューサーと原作サイドだけがやる段階から、お二方に入ってもらいましたね。

亀山 ええ、シナリオを読んで、こちらからもお願いしたこともちょこちょこあったし。

安藤 どうやって茅田先生の世界観を共有するかが問題でしたね。CDを聞かれるかたは、長い人だとすでに20年共有しています。

砂守 ぼくとか亀山さんは新参なので。収録で茅田先生がいらっしゃったとき、緊張しましたねえ。学校で言うと、ぼくらが担任の先生で、父母会をやっているみたいな感じでした。(笑)

安藤 ふだんと違う「困ったぞ」はありました?

砂守 困った話をさせたいんですね。(笑)

亀山 これは「困ったぞ」じゃなくて、「ふだんと違うぞ」なんだけど、音楽のイメージが先で、それからシナリオが出来上がったことかな。砂守くんがイメージを先に作ったのは、すばらしいと思いました。僕らが世界観を作っていく助けになったもの。

砂守 僕らが気にしていたのは、原作のかたから「世界観が違う」と言われることです。音楽もできて収録する段階で原作のかたに「ちょっと違う」と言われるケースもあります。原作のイメージが鮮烈であればあるほど、ずれてしまう危険が出てきてしまう。

安藤 よくあるんですよね。

亀山 そういうリスクは、今回あらかじめ排除されていたね。「間違っちゃいけない」とみんなが思っていた。一番あとから参加した僕は、その空気をひしひし感じました。

砂守 「困ったぞ」は、先に楽器を入れて曲を録っちゃったので、せりふの尺(長さ)を考えていなかったことかな。後になって、「このせりふに合わせるにはどうすればいいんだー!」と頭を抱えました。(笑)

亀山 そうそう、今回は作った曲を100%使えてないんですよ。もったいないなあ。

安藤 ハイ、次の機会に使っていただけるよう、がんばります。ところで、「ここはおもしろかったぞ」も教えていただけますか。

砂守 もう、だいたいおもしろかったですよ。

亀山 原作には、印象的なシーンがぽんぽん並んでるんですよね。クライマックスのグイ、グイってくる感じが続いて、場面として切り抜くところがむずかしい。

砂守 たしかに。

亀山 そういう意味では、ドラマCDの作り方としてはむずしかったかな。曲の面でも苦労されたと思うけど。

砂守 いきなりロック、とか曲のテイストを変えることができないし、限られたスタンダードなクラシック音楽で色合いを塗り分けていった。そこが大変でもあり、おもしろかったところです。

安藤 曲が完成したときは、原作が4分の1もなかったんですよね。曲録りのときに残りの原稿がきて。

亀山 きた、きた、きたーッ、って大騒ぎになった。(笑)

砂守 戦闘シーンと泣けるシーンが来るかなと思っていたら、実際に入ってきたのでよかった。

亀山 そういえば、軽めの場面用の曲は作ってなかったのかな。

砂守 そうですね。ギャグといっても完全にコミカルなわけではなく……。

亀山 「半分」コミカル。俯瞰して見ているコミカルさ。

砂守 音楽では「ここは笑っていいんですよ」と。

亀山 そっと背中を押す程度でしたね。

砂守 楽しく話しているふうで、でもここは戦場ですよ、と音楽でわかってもらえるようにしました。

安藤 役者さんたちに原作を読んでもらったのは、亀山さんの指示ですか?

亀山 いいえ、自主的にみなさん読んでくれました。昨日、大川さん(ウォル役)に会ったんですが、「いま18巻を読んでます」って、にこにこしてましたよ。効果音担当の人たちも、よく読んでくれていたんですよ。効果音を作るには、世界観を把握しないといけないので。効果の人は、「あんなに楽しい仕事はなかった」って言ってました。

砂守 効果音、すごかったですよねえ。グライア(リィの愛馬)の足音なんて、いったい何トンあるんだ! と。(笑)

 

熱いうちに次を仕掛けたい

安藤 いや、こうしてうかがっていると、ますます「次もやらないと」と思わされます。来年以降のみなさんのスケジュールをうかがって、熱いうちに仕掛けていければ。

亀山 その前に、打ち上げやりたいですねえ。

砂守 やりたいですよね。

安藤 ぜひ、やりましょう!

 

(構成◎編集部)